かわいくて男気溢れるミューズ

佐藤大

佐藤 ただ『ビバップ』のときに僕と菅野さんとナベシンさんで大ゲンカしたことがあって、それがむしろよかったのかなと思ってるんです。サントラのリミックス版を作ろうとなったときに、僕とナベシンさんでミュージシャンの選定をしていて、フィラ・ブラジリアとか4ヒーローとかリストアップしたんですけど、菅野さんは当時4つ打ちの音楽が大嫌いだったんです。「あんなものは音楽じゃない。ただマシンが鳴っているだけで気持ちが悪い」って言っていて。それを聞いて僕もカチンときて、菅野さんを当時目黒にあったうちの事務所に呼んで、僕とナベシンさんと音楽ライターの古川耕さんとで「4つ打ちをわからせてやる!」とレコードを持ち寄って聴かせたんです。そうしたら、イアン・プーリーとかを聴いて「面白いのもあんのね」ということになったので、それでリミックス版を作ることが出来た。後日、あれだけもめたにもかかわらず、「最高だったよ!」というファックスがぴろっと来た(笑)。また、菅野さんがほめてくれたということで、リミックス版自体もファンに受け入れられることができました。
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 また、ナベシンさんがシャカゾンビのツッチーさんと菅野さんをクラブで会わせたりという機会もあったりして、菅野さんが「DJっつーのも面白いんじゃね?」となって、『S.A.C.』のときには4つ打ちを作ってたのが面白かったですね。「なに4つ打ち作ってんですか(笑)」と言ったら。「だって合うと思ったんだもん」って。でもただの直感じゃなくて、ギターサウンドに4つ打ちというのは、神山さんのスクエアな隙のなさに対して自分が風穴を空けないと、神山さんは一見柳のようだけれどもけっして折れないので、まわりが折れちゃうから、というような実に的確な人間観察に基づいてやっているんです。
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 そういう意味ではやっぱりおそろしいひとなんです。でもやりたいことが明瞭にある場合は、すごいパワーで後押ししてくれる。しかも、おかしいのはそういうときって大体「わたしやる気がなかったのよ」みたいなこと言うんです(笑)。「ジャズきらい」とか「4つ打ちイヤ」とか。でも、そんなときに限って、実にその構造を掴んだうえで、批評的にリメイクしている。好きじゃないくせに、そのジャンルの一番輝くところを取り出してくる。これは音楽的ツンデレって言うんですかね(笑)。